Column
コラム
ライフスタイルプロデューサー、下田結花さんの
「心地よく暮らす」ためのインテリアコラム
撮影/和田北斗
しもだゆか/株式会社2M house代表取締役
「モダンリビング」 ブランドディレクター(元・編集長)
2021年から東川と東京の二拠点生活を始める
「グラフ旭川」に「My Favorite Place」連載
著書に「心地よく暮らす インテリアの小さなアイデア109」(講談社)
【Vol.3】旭川家具を作る人、使う人
株式会社 カンディハウス、技術開発本部リーダー 河野健さん。家具に触れる指は優しく繊細。【撮影/和田北斗】
「まっすぐに」ーー心に響いたカンディハウスの創業者、長原實さんの言葉
旭川家具を代表する会社の1つ、カンディハウス(旧・インテリアセンター)は1968年に創業しました。
以来、一貫して木という美しい素材を生かし、職人の手仕事を大切にした家具作りを続けています。現在では一年間の家具作りで使う木材の7割が北海道産となり、地産地使用を推進しています。
カンディハウスで仕事を始めて11年目の河野健さん(技術開発本部リーダー)はカンディハウスの特徴をこう表現してくれました。
「ここも木で作っちゃうんだ、とよく言われます」。何とか木で作ろうという気持ちと木で作りたいという気持ちと。
「木の可能性や魅力を伝えたいんですよね」と。
河野さんは2013年カンディハウスに入社。3年間工場で箱物などの制作に関わり、現在の技術開発本部に。現在は新製品開発の設計や試作をしています。
今の仕事は制作の現場にいた時よりも、関わる人の数が増えたそう。工場の事情と、経営者やデザイナー、営業の意見、お客様の希望等との板挟みになることも。それを解決するためには、ただひたすらみんなとよく話すこと。対話の中でしか落としどころを見つけられないと言います。そのために、広く平らな気持ちでフラットに仕事をすることに努めています。
小中高大学とずっとサッカーを続け、その中で友人たちとの関係を培ってきましたが、本来人前に出るのが好きではないとのこと。しかし、父親の仕事の関係から3年おきに転校を繰り返す中で、コミュニケーション力が鍛えられ、それが今の仕事にもつながっています。
大学でデザインを学び、家具の設計にも携わりましたが、木や家具の知識の足りなさを実感し、高等技術専門学院へ。2年間、木材の知識や実践的家具作りを学びました。
就職するにあたっては、家具のテイストが好みだったこと、しっかりと作られていると感じていたことから、飛騨か旭川が選択肢に。当時、カンディハウスの渡辺社長とお会いした時、渡辺社長が話された「和の美意識」という言葉に共感し、カンディハウスに入社しました。大学の時も金沢へ行くか京都へ行くかと迷い、結局金沢にしたそうですが、それもやはり日本の精神性に惹かれたから、と言います。
カンディハウスの創業者、長原實さんとは、入社後何度かお会いする機会があったそうです。
「優しくて目に力がある方でした。長原さんにどうしたら長原さんのようになれますかとお聞きしたら、長原さんはただ一言、『まっすぐに』と答えられたんです」
長原さんについては、このコラムの第2回目にも書きましたが、職人としてデザイナーとして創業者として、会社を作り、仕組みを作り、組織を作り上げられた、正にまっすぐに生きられた方でした。
IFDAの試作という挑戦。そして旭川家具の魅力
旭川で3年に1度行われる国際家具デザインコンペティション、通称IFDAでは一次審査を通った作品を旭川家具のメーカーが試作し、それを審査して受賞作を決めています。
カンディハウスも毎年その試作に関わっています。河野さんにIFDAの作品を試作することの意味をお聞きしました。
「挑戦ですね。初めて作るものだし、手探りのことも多い。しかしそれをすることで、普段の製品では行きつけない考え方や技術に到達することができ、力になるんです。それに海外からの応募が多いので、そのやりとりをすることで直接世界とつながることができるのも大きなメリットです」
河野さんがカンディハウスで初めて購入したのは、デザイナー・渡辺力さんのロッキングチェア「リキロッカー」でした。北欧デザインの中ではフィン・ユールやウェグナーのアンティークの家具も好きと言う河野さん。改めて旭川家具の魅力について伺いました。
1. 旭川や東川、東神楽など周辺地域も含めて家具の工場や工房は100以上。いろいろなメーカーがあるので、自分の好みのものが見つかること。
2. 北海道には良質な木材という資源がある。また、研究機関や教育施設等のインフラも整っており、地域パワーでチームワークで仕事ができる。それが品質につながっている。
3. 新しいことを恐れずにまっすぐにやっていく精神。常に挑戦し、新しいデザインを生み出している。
4. この価格で、この品質が手に入ること。コンピュータ数値制御システムと人の技術が組み合わされ、機械x手仕事によって、手触りの良い家具が生まれている。
5. 半世紀以上のロングセラーがあること。カンディハウスでは長原さんがデザインしたものも今も作られている。
「海外の家具は、10m離れた遠目で見て美しい、日本の家具は近目で見て美しいと言われます。派手さはないかもしれないけれど、素直にまっすぐに作られた良さ。そんな飾らない家具を伝えていきたいと思います」
河野さんが開発に関わったカンディハウスの新作のリビングチェア「 ラグース 」。【撮影/和田北斗】
「せっかく旭川に住んでいるのなら、、、」と選んだ木の家具
旭川家具はどのように実際の生活の中で使われているのでしょうか。カンディハウスの家具をお使いのS邸に伺いました。
1歩中に入ると、ゆったりとしたスペースに、床も天井も木を贅沢に使った何とも心地いい空間が広がっていました。その空間に溶け込んだ美しい木の家具。
素材を生かしたダイニングテーブルは受注生産。脚の位置を動かし、6人がゆったり座れるようにしました。ダイニングチェアは、WING LUX LDサイドチェアー。天板の下にアームが入るハーフアームがお気に召したそう。お子様が小さいので布張りか革張りかで迷われたそうですが、カバーリングなので簡単に外すことができると知り、革張りをセレクト。キッチンの面材に合わせ、テーブルも椅子も素材はウォールナットです。
S様邸のダイニング。キッチンと並行に置かれたウォールナットのテーブルは、10名で囲むことも可能な大きさ。【撮影/和田北斗】
「旭川家具が好きなんです。木の感じが一見して違う。それにせっかく旭川に住んでいるのだから、旭川家具を使いたいと思いました」とS様。
カンディハウスとの関わりは、院長であるご主人の病院の待合室や院長室にカンディハウスの家具を選んだことからでした。それがきっかけで院長から、新しい家は家具だけでなくアートや照明まで全てやって欲しい、とカンディハウスにお話があり、お引き受けすることに。平面図でレイアウトをご提案し、ご夫妻はショップにも3回足を運ばれたそうです。
お客様にも褒められるし、何より自分たちが気持ちいい
S様邸のリビングのソファやテーブルもカンディハウスの家具です。吹き抜けのリビングは、中庭に面し、日当たりの良い空間。この中庭では、病院の職員さんたちを呼んでバーベキューをすることもあるそうですが、中庭があることで、周りからの視線が気にならず、カーテンが必要ないのも利点です。
ソファはtosai LUXシリーズをゆったりと組んで。格子のセンターテーブルは一本技シリーズです。部分的に黒のファブリックを入れることで、照明とのバランスを取り空間を引き締めています。小さいお子さんたちも、このソファが大好き。ここで遊んだり、テレビを見たりしています。照明やアートもカンディハウスがセレクトしました。
リビングから見える右奥には家の竣工時にはなかったグランドピアノが置かれています。家に合わせて黒ではなく、木目の素材感が美しいピアノを選びました。ご主人も奥様も子供たちも全員がピアノを弾かれ、院長室にも電子ピアノを置いていらっしゃるほど。ピアノが美しいインテリアにもなっています。
キッチンに立ったときの眺めが好き、と奥様。新築祝いの時には20人規模のパーティを3、4回なさったそう。
「いらしたお客様にも褒められますし、何より自分たちが気持ちがいい。旅行で素敵な旅館に行っても満足度が低くなってしまって。家の方がずっといいねと。本当にカンディハウスさんにまるごとお任せしてよかったと思います」
中庭に面したリビング。高い吹き抜けの窓からたっぷりの光が差し込む。【撮影/和田北斗】
旭川ふるさと納税の旭川家具の中から、特に私の好きな家具、こう使って欲しいと思うものをセレクトしました。ファブリックも私が選んだ特別仕様のものをご紹介します。
【ダイニングテーブル&チェア】
丸テーブルの3つの利点
「丸テーブルをどうやって取り入れたらいいのかわからない」と言う方もいらっしゃると思います。
確かにダイニングテーブルは長方形が主流。そちらの方が見慣れているし、イメージしやすいのも確かです。しかし丸テーブルには、長方形にはない利点があります。
1、奇数でも座れる
3人、5人と奇数の場合、長方形のテーブルだと1人だけの席ができてしまいますが、一本脚の丸テーブルならバランスよく囲むことができます。また隣り合わせに座っても緩やかにカーブを描いているので、親密なコミュニケーションをとりやすいのです。
2、動線をじゃましない
キッチン、ダイニング、リビングと続く空間の場合、空間の真ん中にダイニングが来ることになります。玄関から入ってきてリビングに行くとき、必ずダイニングを通る動線に。長方形のテーブルは角があるので、心理的な圧迫になりやすいのですが、丸テーブルの場合は横を抜けるのも角がない分スムーズです。
3、人数が増えても対応できる
詰めて座れば、意外とたくさんの人数が座れてしまうのも、一本脚の丸テーブルの利点。スツールなどを足せば、120cmのテーブルでも6人座ることができます。
違うデザインの椅子を組み合わせて使うコツ
椅子は座りやすさを優先して選びたいもの。ダイニングの椅子を全て同じデザインで揃える必要はありません。家族は体型も身長も違うのですから、それぞれが座りやすい椅子を選んでもいいのです。ただし、統一感を出すためにはコツもあります。
まずは木の素材を揃えること。そしてファブリックの色も統一することです。こうすると違ったデザインでもまとまりができ、ちぐはぐに見えません。ここでは、カンディハウスのKOTANとサンの椅子を2脚ずつ組み合わせました。
一本脚でサイズ展開も多い丸テーブルがいい
お勧めしたい丸テーブルの条件は、一本脚で安定感が良く、手触りの良い素材感のもの。深澤直人さんデザインのカンディハウスのKOTANの丸テーブルは、まさにこの条件を満たしています。
細い脚、すっきりと見える天板ですが、安定感は抜群。またサイズ展開が多く、素材や色のバリエーションが豊富なのもうれしいところ。
ベッドルームや窓際などでカフェコーナー的に使うのであれば、直径70cm、一人暮らしのダイニングなら直径90cm、2人〜4人暮らしなら直径120cm以上の丸テーブルがお勧め。
天板の色は床の色を考えて選びましょう。ここではオーク材の床材に合わせてタモ材のナチュラル色の天板を選んでいます。
家具は四角いものが多いので、丸テーブルが入ることでアクセントが生まれ、インテリア自体がこなれた印象になるというメリットも。
次のダイニングは丸テーブルにしてみませんか?
SAN チェアー 北海道カバWNF/ロンシャンCGY
【下田さんのおすすめ】はこちら
返礼品番号:04310
寄附金額:¥400,000
幅51.5cm、奥行き55cm、高73cm、座高45cm、肘高61-67.5cm